ブログトップ

毎日更新♬ エノテカビアンキのブログ

bianchim.exblog.jp

イタリアワイン

カテゴリ:セミナーレポート!( 12 )


 お客さんには届いていると思うが、ロッカ・ディ・モンテグロッシ のマルコさんが来日、ヴィンサントのセミナーの模様をレポートした。
 長いけれど、参考になると思うよ。
 読んでみてね ♬

ロッカ・ディ・モンテグロッシ

ヴィンサント・デル・キアンティ・クラッシコ セミナーレポート

有限会社エノテカ・ビアンキ 丸谷 崇

 セミナーには多数参加しているけれど、ヴィンサントだけに特化して話を聞いたのは、今回が初めてではなかろうか。

 322日、東京・青山にて、ロッカ・ディ・モンテグロッシのオーナー、マルコ・リカーゾリ・フィリドルフィ氏本人による「ヴィンサント・デル・キアンティ・クラッシコ」10ヴィンテージの比較テイスティングセミナーが開催された。


「大変なテイスティングになるだろうから、今回は赤ワインも除いてヴィンサントだけにした。」

 マルコの挨拶で、説明が始まった。


 醸造学的に、イタリアだけでなく世界的にみても唯一無二のもの。それがヴィンサント。

 そんなワインが今日まで広く伝わらなかった理由は、市場に多く出回るヴィンサントの、品質の低さにあった。無論現在は、そのイメージは改善されてきてはいるが、まだ過小評価されているのではないか。

 何故、多くのヴィンサントが好ましくない味わいを呈しているのかとマルコは考え、その理由の筆頭に、「クリーンでない醸造環境」を掲げた。

 ヴィンサントに使われるブドウは、特別な部屋で「陰干し」の過程を経るが、通常、収穫したブドウは棚に置いて乾燥させる。その際ブドウの下に敷かれる「ゴザ」がまず、清潔でない。その結果、ブドウに腐敗菌が多く付着し、当たり前だがそれらを搾ったマストは少なからず、濁る。そのような状態で樽に入れられた液体は、67年、忘れられたように放置される。

 このように醸されたヴィンサントはギャンブルのようなもので、10樽仕込んだ内の23樽が良ければ御の字というもの。

 樽を開けた時の大半が落胆で、2割程度という少ない成功に狂喜していた。

 マルコはその不安定な生産性を改善すべく、「クリーンであること」を念頭に、本格的な醸造に取り掛かった。1997年のことだ。


 ロッカ・ディ・モンテグロッシの土地「モンティ・デル・キアンティ」は標高が高く石の多い土壌。ヴィンサントの原料ブドウを造る上で、「フレッシュさ」、「優美」、「ミネラル」を高い次元でバランス良く備えることができる場所である。

 彼が造るヴィンサントのブドウは、マルヴァジア・ビアンカのみ。美しく育てられた半透明のブドウを10月に手摘みで収穫。

 ブドウは「ヴィンサンタイア」と呼ばれるヴィンサントを造るためだけの屋根裏部屋に運ばれ、そこで陰干しされる。通常はブドウを棚に置いて乾燥させるが、マルコはそれを撤廃した。

 その理由は、棚に置くとブドウは自らの重さで果実が潰れてしまい、そこから腐敗菌が繁殖して広がる。また、その部分を目で見てチェックすることができない。

 そこでマルコは、ヴィンサンタイアの天井から可動式のネットを設置し、その網目に一つ一つブドウの房をぶら下げて乾燥させることにした。こうすることで、ブドウを万遍なく乾燥させることができ、ブドウを全方向から見ることが可能となった。腐敗果を取り除くことができるだけでなく、彼のヴィンサントに不可欠な「貴腐菌」の付着をチェックすることができるようになったのである。


 全ての果粒に貴腐菌が付着したのを確認して、収穫から34か月経過したのち、ブドウはプレスされる。乾燥と貴腐菌の影響で果実の70%近くの水分が失われているため、極めて緩やかに、丸一週間かけてプレスされる。

 長い時間をかけてプレスされた果汁は発酵と熟成の過程に移るが、プレスされた直後の果汁は普通、濁っているので、温度管理されたステンレスタンクに移し沈殿した不純物を取り除く。そうして得られたきれいな果汁を、100リットル以下の小さな樽<カラテッロ>に入れる。この時、果汁で樽を充満させるのではなく、指3本分くらいの空間を空け、シリコンの栓で密閉する。スペースをつくることで、発酵を促すのだ。

 やがて暖かくなると樽の中の液体は発酵を始め、寒くなると発酵が止まる。これを34年繰り返す。発酵が始まると樽の中のガス圧が高くなり、時折、樽に亀裂が入って中の液体が染み出たりすることがあるがこの現象を、「樽が泣く」という、何ともロマンティックな表現を使っているが、

「いっぱい泣かれると、今度はボクが泣きたくなるんだけどネ。」とマルコ。

 発酵の期間である4月から10月はだから、週に23回、泣いていないか樽をチェックし、滲み出していたら樽を修復する。

 「放置」ではなく「見守られ」ながら、カラテッロの中で約7年の熟成を経たヴィンサントは、ボトリングされる前にも静置して不純物を取り除く。

 乾燥から発酵・熟成を経てカラテッロを出る頃には、その液体は収穫量の10%以下にまで減っているというから、その濃縮度合いは安易に想像できよう。

 ボトルに移されてから更に2年の熟成を経て市場に出荷。

 収穫から実に、9年半(!)もの歳月を経てリリースされるということになる。

 エノロゴであるアッティリオ・パーリ氏は、ボトル熟成を更に一年長くすることを勧めている。そうすることでフレッシュさが増しバランスが整う、というのだ。

 そしてマルコは、このセミナーの結果で、どうするかを判断するのだそうだ。


 永い歳月を経てリリースされたヴィンサントは、濃厚の極み。

 しかし、ただ濃くて甘いだけではない。

 濃縮した果汁による甘さに加え、美しく伸びやかな酸と、極めて複雑な味わいを呈する。

 香味に濁りがなくクリーンだから、たとえ複雑な味わいであっても、容易に特徴を捉えやすい。

またマルコは、「<揮発酸>をヴィンサントの特徴と考えている人がいるが、あの香りは特徴ではなくて欠点だ。」と言った。その言葉通り彼のヴィンサントには、セメダインなどに代表される香味は感じられなかった。


 今回、マルコのヴィンサントを以下の10ヴィンテージ、テイスティングした。

1995199719982000200120022004200520062007

d0212522_18340517.jpg

「ヴィンサントの醸造は試行錯誤の繰り返し。

 伝統を保持しつつ、良くないと思うことは改善する。ネットを使ってブドウを吊る方法は、2000年のヴィンテージから始められたことだし、一時マルヴァジア・ビアンカにほんの少しカナイオーロ・ネロをブレンドしたこともあったが今はそれもやめて、現在のスタイルが最良と判断した。

 今気になっているのは、エノロゴのアッティリオが勧める<ボトル熟成を長くする>かどうか。それを今、決めようと思う。参加者の皆さんの意見を聞きたい。10のヴィンサントの中で2つ、良かったものを選んで、教えてほしい。」

 と彼は言った。

 実際に比較すると、ヴィンテージによる差は外観からも捉えることができるほど異なるものもあった。

 2000年と2001年を比較しても、2001年はアルコールを感じる香り、酸度が強いがアフターに甘みが残る。対して2000年は、暑いヴィンテージを反映してか、ハーブ系のアマーロを想わせる香り、複雑性そして、苦み。

 といった具合。

 僕が気に入ったヴィンテージは、2000年と2005年だった。

 そして意外なほど、この2ヴィンテージを好む参加者が多いように感じた。

 この結果を聞いてマルコは、

「アッティリオのアドバイスが正しいことが判ったよ。実は2005年ヴィンテージ。これは他と異なり陰干しがゆっくり、そして貴腐菌の付着もゆっくり進んだ年だった。できあがったヴィンサントを飲むとボクは納得できなかったんだけれどアッティリオは、『熟成させれば大丈夫。』と言ったんだ。そして実際、あなたたちはそのヴィンテージを好きだと言った。彼はすごいよ!だから彼のアドバイス通り、ボトル熟成を1年長くすることを、今決めたよ。」


 少し前、このヴィンサントを抜栓して一年経過したものを飲んでみたが、びっくりするほど味わいに変化がなく、しかも美味しく飲めた。このことを話した全ての人は驚いたが、今回通訳して下さった宮嶋さんは違った。


「もともと酸化しまくったワインだからね(笑)

 変わろうにも変わりようがないんですよ。」


 僕は上質なデザートワインを常備したレストランが大好きだ。

 これがあるのとないのとでは、お店を出た時の満足度に差が出る。

 僕が言うと「営業トーク」と思われても仕方がないが、それでも敢えて言おう。

抜栓して一年も品質が変わらないものなら、上客への対応力を高く評価され店舗の売上にも貢献する。そうでありながら、損することがないという稀有なワイン。

それがマルコのヴィンサントだ。


「ワインは食事と共にあるもの。でもヴィンサントは例外。

 ひとたびこれを飲めば、世の中のセカセカした時間を忘れさせてくれる。

 そういうヴィンサントをこれからも、造り続けたい。」


 念願のヴィンサントだけのセミナーを終えたマルコはそう言って、満面の笑みを浮かべた。


業務用イタリアワインなら! エノテカビアンキッ!! 造り手の努力の結晶は、より多くの人に知ってもらいたいやん? ~


[PR]
by enotecabianchi | 2018-04-09 18:43 | セミナーレポート! | Comments(0)
d0212522_17461505.jpg
 東京出張の本丸、テイスティング ♬
 しかも、ヴィンサント・デル・キアンティ・クラッシコ の垂直だ。
 な、なんと! 10ヴィンテージ!!

 ロッカ・ディ・モンテグロッシ の当主、マルコ・リカーゾリ氏は、この会をずっと昔から考えていたそうだ。
 それだけ、マルコさんのヴィンサントへの想いが強い。

 飲んだ人には解ってもらえると思うが、これほどまでに 「フレッシュさ」 を纏っていながら、
 上質のヴィンサントだけが持つ 「複雑性」 と 「甘美な妖艶」 を備えたヴィンサントを、他に見つけることができない。
 
 何故そうなのかを、じっくり伺った。
 なのでそれ以上にじっくりと構成を考えて書かないと、伝わらない。

 またレポートするよー ♬

業務用イタリアワインなら! エノテカビアンキッ!! 今まとめてるねん ♬ ~


[PR]
by enotecabianchi | 2018-03-26 18:24 | セミナーレポート! | Comments(0)

 ジャンフランコ・アレッサンドリアさんが来日した。
 あまり知られていないかもしれない。 かく言う僕も昨日、初めてテイスティングした。
 知らない人のために、 ↓

d0212522_21334588.jpg
 そう、かの有名な、「リンシエメ」 の造り手のひとり。
 エリオ・アルターレ を中心とした7人の造り手が、同じコンセプトで手掛ける 「リンシエメ」。
 ラベルを見たことのある人も多いだろう。

 世間ではよくそのメンバーのことを、「バローロ・ボーイズ」 と呼ぶが、少なくともジャンフランコさんは、その呼び名を好ましく思っていない。
 時代は移る。 モダンバローロがもてはやされていた時代から、伝統派が注目を集める時代へとシフトしている中、この呼び名がやや皮肉めいていることを、肌で感じ取っているのだろう。

 80年代は、質より量の時代だった。
 ネッビオーロよりもドルチェットやバルベーラの方が高く売れた。
 飲めるまでに時間を要するネッビオーロよりも、すぐにリリースできる品種が重宝されたからだ。
 だからその時代、ブルゴーニュのワインは100ユーロで売っていたが、バローロは 3ユーロ程度。
 何が違うのか疑問を持ち、ブルゴーニュへ旅立ったのが エリオ・アルターレで、彼は持ち帰った情報を、学びの場を設けて造り手たちへ提供した。

収量を減らす。
バリックの導入。
発酵時間の短縮など、ブルゴーニュからは多くを学んだ。

しかしその一方で、ジャコモ・コンテルノ の造る 「モンフォルティーノ」 を飲んで驚嘆した。

「人はよく、伝統派とモダン派が分かれて、紛争でもしているかのように想像するが、全くそんなことはない。
 メディアが大袈裟に報じただけで、それらは日常に溶け込んでいるものだ。
 エリオ・アルターレとバルトロ・マスカレッロ はよく醸造のことで衝突したが、
 それと同じくらい、食事を共にしていたよ。」

 自分たちの歴史と、ランゲの今を、大いに語って頂いた。
 だからワインの味わいに関しては、ほとんど語らなかった。
 そして彼の口からは、いろんな造り手の名前が出た。

 キアラ・ボスキス、ドメニコ・クレリコ、ロベルト・ヴォエルツィオ を仲間と呼び、
 尊敬する造り手はと聞くと、
 バルトロ・マスカレッロ、ジュセッペ・リナルディ、ブルーノ・ジャコーザ、アルド・コンテルノ、カッペッラーノ と止めどなく出てくる。

 最後にこんな質問をした。

「ブルゴーニュからは先に聞いた近代醸造法を多く学ばれたが、
 古典バローロの造り手には、何を学びましたか?」

 その問いに彼は、

「バローロという、文化を学んだ。」

 と答えた。
 僕にはこの言葉が、今回のセミナーの「核」を成しているように思えた。
 彼のまっすぐな想いは、彼が造るワインの味わいに如実に表現される。
 真面目で、優しい味わい。

 3月のDMを、お楽しみに!

業務用イタリアワインなら! エノテカビアンキッ!! ビール6杯飲んだ人のトークとは、とても思えんかったわw ~


[PR]
by enotecabianchi | 2018-02-20 22:06 | セミナーレポート! | Comments(0)

d0212522_18193937.jpg
テッレ・ネーレ のワインたち

 マルコ・ディ・グラツィア のセミナーに参加した。
 セミナーの冒頭で彼は、
「ワインの <醸造> に関して話すつもりはない。 話したところで何の意味もないからね。」
 と言った。
 エトナの歴史を簡潔に話したあと、テッレ・ネーレの、とりわけ畑に関することと、彼の哲学、そして感性についてのセミナーだった。
 マルコ・ディ・グラツィア のことを知る人なら当然というかもしれないが、セミナーで使ったワイングラスは全て、ブルゴーニュ型。
 おっと、ここでは僕の意見や感想を織り交ぜるよりも、ご本人の言葉をそのまま記した方が伝わると思うので、名言を列記してみる。

「(ボクの造るワインは) 家族のようなもの。 それぞれに異なる性格を持つが、DNAは同じ。
 あるいは、上質で貴重な同じ布地を使って拵えた様々な種類の服のようなもの。 どれも上質だが、元の布地は同じ。」

「エトナは、10月の収穫期に雨が降りやすい。 また、ワイン産地としては唯一、溶岩の危険性がある。
 そして、細分化された段々畑での作業や収穫は、困難を極める。
 だが、いや、だからこそ、ただ一つの個性を纏ったワインが造られるんだ。」

「これだけ狭い地域で、ここまで多様性に富んだキャラクターを出せる産地は、世界で3つだけ。
 その3つとは、<ブルゴーニュ>、<ランゲ>、そして、<エトナ> だ。」

「(ボクの造る) ロザートは、<月> を想起させるもの。 自らは光らず 他の光で輝く存在。
 女性的でロマンティックで、月に喩えたくなるような要素を持つ。」

エトナ・ロッソ について
「シンプルだがエトナの特徴が出た、みずみずしいワイン。
 <泥からきれいな花が生まれる> という言葉があるが、人を恐れさせてきた火山から、この美しいワインが生まれるんだよ。」

サント・スピリト について
「香り高く、女性的なワイン。 性格に一貫性があり明確な個性があるが、それを見せびらかさない。 内に大きな力を秘める。
 美しいドレスを完璧に着こなした女性のような、優美で官能的なワイン。」

サン・ロレンツォ について
「収穫は10月末で最も遅い。 カルデラーラの畑と同じ時期。
 他のどの畑とも全く異なる土壌。
 男性的なワインだが <威厳> ではない。 貴公子的な、若さとエレガントさを持っていて、女性のような要素を持つがあくまで男性的。
 絹のようなタッチ。」

 他にも嬉しい名言があったがこのへんで。


 塩野七生さんが、
「<威厳> は、同性愛であろうと異性愛であろうと、あらゆるセックスにアレルギー反応を起こさせる。」
 と書いていたが、<威厳> と <官能>は、対極にあるのかもしれないね。
 彼の造るエトナに、威厳に満ちたワインはひとつもなかった。
 つまり、どのワインも色気があり 官能的だったということ。
 これは、アンドレア・フランケッティ が造るパッソピッシャーロ のコントラーダ・シリーズ にも通ずるものがあるから、エトナを 天才が造ると、その領域に達するのだろうね。
 最後に、マルコ・ディ・グラツィアのこの名言を。

「力強く声高に叫ぶようなワインよりも 優しいワインを。
 人はだれでも、ゲンコツよりも愛撫をもとめるものだからね。」

 感性に訴えるセミナー。
 大いに楽しませて頂いた。
 グラツィエ! マルコさん!!

業務用イタリアワインなら! エノテカビアンキッ!! また在庫増えるな こりゃ・・・。 ~


[PR]
by enotecabianchi | 2018-02-03 19:31 | セミナーレポート! | Comments(0)
d0212522_19200910.jpg
 ピエモンテ州、カスティリオーネ・ファッレットのバローロの造り手、カヴァッロット から、
 アルフィオ・カヴァッロット さんが来日、セミナーに参加した。

 もう、テイスティングのバローロが豪華すぎ!
 彼が手掛ける3つのバローロを、ご自身の説明を交えながらのヴァーティカル・テイスティング。

 数値化されたデータを見て、
「この時期に雨が降ったから収穫が20%おちた。」
 とか、
「乾いたヴィンテージで、最初にテイスティングした時の数値は低かったが、熟成によって まるみを帯びたね。」
 なんて聞いていると、まだ若いバローロが熟成によってどのような味わいになるのか を予想するのに、大いに参考になる。
 写真の3本は今、ウチのセラーで寝てるねん。
 ピノネロ・イン・ビアンコ の「ピネール」 はともかくとして、
 バローロはもうちょっと、寝てなさい w

業務用イタリアワインなら! エノテカビアンキッ!! うねうね文字を解読しながら、復習復習 ♬ ~


[PR]
by enotecabianchi | 2017-12-04 19:30 | セミナーレポート! | Comments(0)

 ウチのお客さんの手元には届いていると思うけれど、ピオ・チェーザレのセミナーレポートを書いた。
 長いけれど、よければ読んで下さいまし。

~ ピオ・チェーザレ当主ピオ・ボッファ来日レポート ~

有限会社エノテカ・ビアンキ 丸谷 崇

 67日、バローロの造り手ピオ・チェーザレの現当主、ピオ・ボッファが来日、「特殊な」試飲セミナーが行われた。


~ ピオ・チェーザレ ~

アルバに本拠地を置くピオ・チェーザレは、創業1881年。その歴史と、アルバにおけるワイン造りへの貢献から、アルバ市の紋章を自社のワインラベルに掲げることを許された、唯一の造り手。

 とりわけ「伝統」を重んじ、その考えに則って今日までワイン造りを全うしている。

 良いものを安定的に供給することが同社の務めと考えており、伝統とは不変ではなく、基となる考えを守るために最良のものへと更新すること、これこそが伝統であり、変えないことが良いことではない、と説く。

E’ non chiamatelo “BASE”

Please don’t call it “REGULAR”

(フツーの、なんて呼ばないで。)



 これは、現行ヴィンテージのバローロのラベルに記されているフレーズ。

 今回ピオ・ボッファが来日した目的は、これを日本のワインラヴァーに知ってもらうためだ。

 かつてバルバレスコの雄、アンジェロ・ガヤは、バルバレスコのクリュシリーズをリリースした際、代々造り続けているバルバレスコの、「並の」とか「ノーマルの」といった世間の呼び方に我慢ならず、クリュシリーズを全て「ランゲDOC」に格下げしたのは、あまりに有名な話だ。

 ピオ・ボッファによる今回のセミナーも、その考えに似ている。同社が誇るクリュ・バローロ「オルナート」をリリースしたために、伝統的に造り続けている「バローロ」が市場では、「レギュラー」と呼ばれ続けた。

 彼はこのセミナーの冒頭で、

「私はこの試みをずっと昔から考えていた。そして今日、ようやくそれが実現した。」

 と嬉しそうに話した。

 造り手なら誰でも、自分の造ったワインが、「フツーの」なんて呼ばれたくないものだ。

 まして それが、「フツーのワイン」とは到底呼べない「バローロ」の造り手なら、なおさらだ。


~ セミナーの内容 ~

バローロ・エリア内にピオ・チェーザレが所有する主要な畑、ロンカリエ(ラ・モッラ)、モスコーニ(モンフォルテ・ダルバ)、オルナート(セッラルンガ・ダルバ)のそれぞれ3ヴィンテージ(201620152014)の樽熟成中のサンプルを2週間前に瓶詰めしたもの、そしてそれらのクリュを全てブレンドしたピオ本来のバローロの同3ヴィンテージ、つまり同じヴィンテージのバローロ4種を3ヴィンテージ、計12種類の「不完全なバローロ」を、ピオ・ボッファ自らの説明と共に、比較テイスティング。

これが、最初に「特殊」と書いた理由だ。

 ピオ・チェーザレは、その長い経験から、同社の考える「バローロ」は、セッラルンガ、モンフォルテ、ラ・モッラなどから収穫したネッビオーロを、「個別」ではなく、発酵前に「全てブレンド」してバローロを造る。

 つまり、それぞれのクリュを名乗ったバローロは、そもそも造っていないし、樽熟成中のこれらのバローロは本来、存在しない。

 これらのバローロはピオ・ボッファが、いつかやろうと考えていた今日この日の為に、作ったのだ。時間と手間とお金をかけて。

 彼の想いがいかに強烈かつ切実であるかは、このことを考えれば想像も容易だ。

テイスティングは、ヴィンテージごとにそれぞれのクリュを飲み比べるスタイルで行われた。

 ヴィンテージとクリュの個性を、ピオ・ボッファの言葉で記す。


~ ヴィンテージについて ~

2016

 稀にみる素晴らしい年。

 暑くはないが暖かい年で、乾燥しすぎず、ブドウの成熟がゆっくりと進んだ。

 10月末まで夜が涼しかった。豊かな果実味が特徴のバローロとなるだろう。

2015

暑く、乾燥した年。

 2016年と比べると酸度が少なく、ドライな1年。

 8月と9月はブドウの房がやけるほどの暑さを伴った。

 根を地中深くまでおろしたブドウは、その影響を受けにくい。

2014

 一般的に難しい年とされているが、バローロ・バルバレスコ地区ではその逆。

 クラシカルな年。6月と7月に雨が多く涼しい日が続いたが、雨の降らない日は暑かった。

 雨がブドウの熟すスピードを遅らせ、7月に30%もの厳しいグリーンハーヴェストが行われた。8月、暑い日が続き、遅れていた成熟が一気に進んだ。そのあとは良い気候が続いた。

 ピエモンテのオールドスタイル。

 個性や強さを求めるのではなく、ピノノワールのようなエレガンスを求めるべきヴィンテージ。


~ クリュについて ~

ラ・モッラ <ロンカリエ>

 バローロの区画の中で最も大きく、かつ生産量が多いのがラ・モッラ。

 強い個性はないがエレガントでフルーティ、そして柔らかさを伴ったバローロとなる。

 砂質が多いため、軽やかで優しく、開きやすい。

モンフォルテ・ダルバ <モスコーニ>

 引き締まった果実、しなやかで大きく、多面的な味わい。

 優しいタンニンでシルキーな舌触り。

セッラルンガ・ダルバ <オルナート>

 タンニンと骨格、酸が溶け合っている。

 樽での熟成を要する力強さ。複雑み。

 ピオ・チェーザレが考える「理想のバローロ」とは、それが持つ「厳しさ」が備わっているものだという。だから、そのキャラクターを最も多く備えている「セッラルンガ・ダルバ」のネッビオーロが、バローロ全体の60%、と最も多い。逆にその対極にある「ラ・モッラ」のものは、その比率が最も低い。

 それぞれのクリュのものは、たとえ樽の中に眠っているものはいえ、やはり「バローロ」の個性を持っている。しなしながらそれと同時に、「何かが足りない」。

 それは、ラ・モッラならタンニンが、モンフォルテなら骨格が、セッラルンガならば上品さとしなやかさが、それぞれ不足している。

 それぞれの長所を活かし、足りないものを補うことで、全てのテロワールを備えたバローロができあがる。

 だから、ピオ・チェーザレのバローロは、畑を表現しているのではない。

 「バローロ」そのものを、表現しているのだ。

 これこそ、ピオ・チェーザレのコンセプトである。

 本来、彼らの伝統でなかったクリュのプロトタイプを作ることで理解を求める、「変えないために変える」、いかにもピオ・チェーザレらしい伝統といえよう。

 これら12種類の「不完全な」バローロをテイスティングしたのち、現行2013年ヴィンテージの「バローロ」をテイスティングした。この年は、「2012年と比べると暖かい年で、ブドウの成熟期間は長かった。好ましい凝縮感とフレッシュな果実味、そしてタンニンとのバランスが整った味わい。ワインは、長い熟成が期待できるだろう。」とのこと。

 個人的に、これまでテイスティングした12種のどのバローロよりも、均整がとれていて美味しかった。ピオ・ボッファの言う厳しさを備え、バランスが整い、そして何より、安心感があった。

 「フツーの」と言われ続けたことに異を唱えて行動したのが、今回のセミナーの主旨。

 大いに勉強になったがそれよりも、解ってもらうために努力を惜しまない、造り手の熱意に感服した。実際、彼も言っていた。

「ワインは商売ではない。情熱だ。」

 とね。

 ピオ・ボッファが長年思い続けていた願いが解ったように感じたのでこのレポートを綴ったが、文字だけでは分かりにくいと思う。とはいえ、造り手のこの努力を知っていれば、彼のバローロを飲んだ時、ずっと深く味わえるはずだ。「特殊な」セミナーだったからこそ、得たものも特殊で、また大きかった。

 どうか、彼らの努力の結晶である「バローロ」を、実際に飲んで確かめてほしい。

 飲めば必ず、「店に1本置いておきたい。」

 そう思うはず、ですよ。

2017621日 夏至


業務用イタリアワインなら! エノテカビアンキッ!! 造り手の意を汲みとるのだッ! ~


[PR]
by enotecabianchi | 2017-07-11 19:32 | セミナーレポート! | Comments(0)

 既にウチのお客さんには手元に届いていると思うが、イゾーレ・エ・オレーナのオーナー、パオロ・デ・マルキさんの来日レポートをば。
 画像はないが内容は濃い、と自負しているので、長いけれど よければ読んで下さいな。


~ イゾーレ・エ・オレーナ当主

パオロ・デ・マルキさん来日レポート ~

有限会社エノテカ・ビアンキ 丸谷 崇

 僕がイタリアワインの業界に入ったのは今から20年ほど前。

 市場では数多の情報が行き交い、各インポーターが競うようにワインを売り歩いていた。

<すごいワインがリリースされる!>という噂が流れれば、入荷する前に売り切れる時代だった。

 その中心的存在、ひときわ華やかで例えがたい魅力を纏った地域のワインがあった。

 トスカーナだ。

 スーパートスカーナの大波が次々と押し寄せてきた時代。残念なことに僕が勤めていたインポーターはそのカテゴリーを持っていなかったから、それらを売り歩いている営業マンを羨ましく思ったものだ。

 スーパートスカーナの中心となったのは、やはりフィレンツェとシエナの間、キアンティ・クラッシコ地区のワイナリーがリリースしたものだろう。アンティノリが持つティニャネッロやソライア、ペルカルロ、カマルティーナ、レ・ペルゴレ・トルテなどは、今なお活躍するワインばかり。

 その中に、今回来日した パオロ・デ・マルキさんが造る「チェッパレッロ」も肩を並べていた。

~ イゾーレ・エ・オレーナ ~

 1956年、北ピエモンテ出身の デ・マルキ家は、トスカーナ州キアンティ・クラッシコ地区内の西側、バルベリーノ・ヴァル・デルサにある、イゾーレ村とオレーナ村に畑を購入した。バルベリーノ・ヴァル・デルサは地中海から最も近い丘で、キアンティ・クラッシコにありながら海の影響を受ける特異な土地である。イゾーレは450m、オレーナは380mと、キアンティ・クラッシコ地区内でも高い標高。そしてオレーナの東側には森が広がる。良質なブドウを収穫するに適した土地といえよう。

 また、320ヘクタールを所有していながらブドウ畑は51ヘクタールというから、良いブドウを造るための環境作りに注力しているのが窺える。

~ キアンティ・クラッシコ ~

 チェッパレッロは、イゾーレ・エ・オレーナを一躍有名にしたワインだが、やはりここはキアンティ・クラッシコの造り手。キアンティ・クラッシコこそが、看板商品だ。

 主体となるサンジョヴェーゼに、補助品種のカナイオーロ、そしてそこに、シラーをブレンドする。これが、イゾーレ・エ・オレーナのキアンティ・クラッシコの伝統だ。

 今やイタリアにおけるシラーの栽培は珍しくないが、トスカーナのこの地に、最初にシラーを植えたのはパオロ・デ・マルキで、以来、キアンティ・クラッシコにごく少量ブレンドすることで全体のバランスを整える役割を担っている。

 つまり、たくましい酸を有するサンジョヴェーゼに、カナイオーロとシラーをブレンドすることによって、強い酸を和らげ、スパイシーさとフィネスを備えた、上質なキアンティ・クラッシコに仕上がるのだ。

~ チェッパレッロ ~

 今は枯れてしまったが、カンティーナの近くを流れる小川の名前からその名が付けられた。その為チェッパレッロは、単一畑ではない。イゾーレとオレーナの畑から厳選されたサンジョヴェーゼのみが、チェッパレッロとなる。

 このチェッパレッロ誕生前にサンジョヴェーゼ100%(当時、これではキアンティ・クラッシコを名乗れなかった)のワインは、「レ・ペルゴレ・トルテ」ただひとつで、その事実だけでも、このカテゴリーを創造した偉大な造り手であり、偉大なワインといえるだろう。

 ちなみに、レ・ペルゴレ・トルテのファーストヴィンテージは1977年、チェッパレッロが1980年。そしてその後、フラッチャネッロなどが続く。

  世に言うスーパートスカーナの新樽比率は高いものが多いが、チェッパレッロのそれは全体の3分の1以下と低い。その結果か、若いヴィンテージですら落ち着いた安定感がある。

 元祖「ピュア・サンジョヴェーゼ」は存在感が違うのだ。

~ コッレツィオーネ・プリヴァータ ~

 このシリーズは、シャルドネ、シラー、カベルネ・ソーヴィニョンの3種のワインで構成される。

 中でもシャルドネは、熱烈なファンが世界中にいて、日本の市場でもほとんど出回らない。スーパートスカーナ全盛と同じ頃、同じく大ブレイクした「シャルドネ・バリック」というカテゴリーを牽引したワイン。トスカーナにおける「孤高のシャルドネ」というべきもの。

 昔、このシリーズは、「コッレツィオーネ・デ・マルキ」という名でリリースされていた。

 何故、名が変わったのか聞いてみると、

「デ・マルキ家は元来、伝統的なワインの造り手だろう? だから最初は、プライベートな名を付けて伝統的ワイン、つまりキアンティ・クラッシコ、ヴィンサント、そしてチェッパレッロとは区別したかったんだ。でもこのシリーズを創ったのは僕だ。デ・マルキ家じゃない。シャルドネやカベルネで造ったワインがその名を冠しているのはどうもしっくりこなくてね。だから、僕パオロのプライベートラベル、ってことで、<コッレツィオーネ・プリヴァータ>って名に変えたのさ。」

~ プロプリエタ・スペリーノ ~

 このカンティーナは、パオロ・デ・マルキが1999年に購入したもの。

 場所はピエモンテ州レッソーナ。「北ピエモンテ」と総称されるこの場所は、今でこそ、130ヘクタールのガッティナーラ、100ヘクタールのゲンメを筆頭に、市場でよく知られるようになったが、18世紀以降は荒廃を極め、18,000ヘクタールあった畑は800ヘクタールへ、プロプリエタ・スペリーノのあるレッソーナに至っては、1,200ヘクタールからたった4ヘクタールへと激減した。

 その最大の理由は、「フィロキセラ」によるもの。それ以前は、バローロやバルバレスコよりもずっと名高い銘醸地であったそうな。

 フィロキセラが猛威を振るった後、人々は畑を復興することなく、この地を捨てて、繊維業が盛んな近隣の街ビエッラへと居を移した。レッソーナは、ビエッラから最も近い産地であったために人々に減少が著しく、畑の荒廃が最も深刻な土地となった。現在でもレッソーナは、他の2産地と比べると生産量が少ないのは、こういった歴史があるのだ。

 パオロ・デ・マルキはこのレッソーナの土地を購入、ワインを造ることを決心した。彼のルーツ、北ピエモンテとは正に、このレッソーナである。

「自分のルーツであるこの地で、いつかワインを造りたかったんだ。」

 パオロさんはそう言う。

 そこでは伝統に忠実に、この地のワイン、レッソーナとコステ・デッラ・セシアを造る。現在では彼の息子ルカもワイン造りに参加し、プロプリエタ・スペリーノの責任者として活躍する。

 レッソーナのカンティーナを購入したのは彼が50歳の時。その歳にして、新しいカンティーナを興すというのだから、気持ちが若いのだろうね。

 2017515日。一日同行して回ったパオロ・デ・マルキさんは66歳だが、とてもその歳には見えない。その歳になった現在でも、新しく考えているプロジェクトを、柔らかい笑顔を交えて僕たちに語ってくれた。

自分が昔、憧れた造り手に、会って、同行営業しているのが誇らしかった。

 この業界に入ってイゾーレ・エ・オレーナの存在を知り、それを輸入するインポーターへ入社し、それを嬉々として売り歩いた時も、本人には会えなかった。だから自分にとってこの日は特別であったし、だからこそ同じ気持ちを共有している人のお店へ、ほんの数軒ではあったけれど訪問し、本人の声で語ってもらえたのが嬉しかった(熱く語りすぎて長かったけどねー)。

「この来日が最後になるかも。」とパオロさんは言った。

 年齢的にもそうなのだろうが、

 「世界を飛び回って営業するのが僕の使命ではなく、良いワインを造り続ける事こそが使命と思っているのでね。」

 と彼は付け加えた。握手した彼の手は大きくてゴツゴツした、農民のそれだった。

 数か月前、ある会で「チェッパレッロ2002年」を開けた。

 ご存知、2002年は誰もが「悪い年」と言うヴィンテージ。

 さてそのワインは、噂通りの悪いヴィンテージを反映した味わいだったのかというと、

 全くそうではなかった。

 まだまだ上向きの熟成過程で、滑らかで素晴らしいワインだった。

 このヴィンテージのチェッパレッロを、輸入元のエトリヴァン佐々木さんは、「全くと言っていいほど売れなかった。」と言った。

 美味しいワインを飲みたい。 ワインラヴァーならば誰でも、そう願うものだ。

 だが、良いヴィンテージかどうかは、悪いとされるヴィンテージを知ってこそ判断できることで、良いヴィンテージだけを飲み続けても、それが良いかどうかは、解らない。

 毎年買い続け、飲み続けることが、良し悪しを判断できる唯一の方法であり、そういった造り手を2、3決めておくと、造り手の苦楽を少しではあるが、共有できる。

 それこそが、ワインの最大の歓び。

 40回以上、収穫と醸造を経験しているパオロさんのワインは、それだけの説得力がある。

 最後に、15年前、佐々木さんから伝え聞いたパオロさんの言葉で、このレポートを終えようと思う。

悪いヴィンテージなんて存在しない

あるのはそのヴィンテージの個性

それだけだよ

パオロ・デ・マルキ

2017522日 高野山大学図書館にて作成



業務用イタリアワインなら! エノテカビアンキッ!! 解ってもらうために、時間かけてますねん。 ~


[PR]
by enotecabianchi | 2017-06-08 13:28 | セミナーレポート! | Comments(0)

 バローネ・ディ・ヴィッラグランデ のレポート、コピペ~ッ!
 (長いので、ヤな人はスルーしてね。)


 11月19日 来阪し試飲会を行ったエトナの造り手、ヴィッラグランデ 当主マルコ・ニコロージ夫妻。
 彼で10代目というから、エトナでもかなりの歴史を持つワイナリー。
 カンティーナのある場所は、エトナ山の東側に位置する 「ミロ」。山の北と南は エトナ・ロッソ の産地として名高いが、ここ ミロは主に、白の産地として知られる。実際、北と南では、赤が80% で白は20%。 ミロは、白が70%、赤は30% の割合となる。
 この違いは、ひとつには 「降雨量」 が影響している。北と南の降雨量は、年間400ml から 800ml であるのに対し、東側の ミロは、1,200ml から 2,500ml。
 また、気温にも大きな差がある。他は、赤に適した気温であるがために白にとっては暑くなりすぎ、白ワインに複雑みを与えない。ミロは白ワインにとって不可欠な 「フレッシュさ」 を高いレベルで享受する、約束された場所。

 このミロに、カンティーナと自社畑を所有しているのは、このヴィッラグランデ だけであり、エトナでは数少ない、「エトナ・ビアンコ」 のスペシャリストなのだ。

 また、軽く見られがちな 「スーペリオーレ」 についても、彼は熱く語った。 「スーペリオーレ」 はミロの中でも特定の場所で造られた白ワインにのみ、表記することができる。
 つまりヴィッラグランデ は、エトナ・ビアンコ の個性を最も的確に表現する場所に畑を所有し、かつ、唯一の 「スーペリオーレの造り手」。
 エトナ・ビアンコ における 「スーペリオーレ」 は、ヴィッラグランデ の代名詞でもあるのだ。

 試飲会を終えた夜、北堀江のシチリア料理専門店 「クチーナ・イタリアーナ・ウエキ」 で彼らと夕食を共にした。
 食事のはじまり、彼らは乾杯に、「ムルゴ・ブリュット」 を選んだ。ネレッロ・マスカレーゼ で造られた メトド・クラッシコだ。

マルコ: 「ネレッロ・マスカレーゼで造ったメトド・クラッシコは、エトナでは伝統的なものなんだ。あまり知られていないけどね。でもこれは理に適ったことで、山の東側で造ったネレッロは、酸度が高い。黒ブドウにもかかわらず、ね。これが伝統的である理由で、乾杯に選んだ理由でもある。それともうひとつ、ムルゴを選んだ理由は、彼らとは古くからの友達だからさ(笑)」



 食事がすすみ、プリモ・ピアットは魚介の2皿。
 「魚介ラグーのリングイネ」、そして 「レモンのリゾット、赤足エビのグリル添え」 に、待ってましたとばかりに、彼らの 「エトナ・ビアンコ・スーペリオーレ2014」 が合わせられる。
 リストランテのお料理とこのワインを合わせたのはこれが初めてだったけれど、何かが突出した感じではなく、優しく、バランスが整ったもの。このバランスこそが、ヴィッラグランデ の真骨頂。

マルコ: 「テロワールを反映させること。テロワールを活かすにはテクニックは必要だよ。でも、造り込まないことはもっと重要なんだ。あくまで、エトナの土地を素直に表現することなんだよ。」


 彼らが造る赤ワインにも、ミロの個性が素直に反映されていて、強さによるものではなく、「優しさからくる個性」 を形成する。
 セコンド・ピアットの 「イベリコ豚ベジョータ肩ロースのロースト」 には、彼らが造る 「エトナ・ロッソ2013」 が合わせられた。
 なるほど確かに、赤もバランスが整っている。そのままでも優しくて美味しいが、このお料理とのアッビナメント は最高で、その良さは倍増した。

 次は、メルロを主体にネレッロ・マスカレーゼをブレンドした 「シャーラ」。
 ヴィッラグランデでは、シャルドネやメルロが少しずつ植えられている。これは、他の造り手ではあまり見られない。植樹したのはマルコのおじいさんで、樹齢は約80年。
 エトナ山は、シチリアの中でも特異なテロワールを有する。 彼らのカンティーナがある 「650mを超える標高」 とは、アルト・アディジェ のそれに匹敵する。中でも ミロ は先述の通り、白ワインに適した産地であるが故に、メルロに関しても、他のシチリアで産するメルロと比べても細身で、優しい果実味を持ったワインとなる。優しい味わいはつまり、食事には不可欠な 「飲み心地」 へと直結するのだ。

マルコ: 「リコリスやチョコレートのニュアンス。品種からくる甘みとまろやかさ、そして <山のメルロ> が有する、飲み心地の良さ、これが大事なんだ。このワインを嫌いだなんていう人は、いないと思うよ。」


 今、マルコは35歳。話す言葉ひとつひとつが自信にあふれていて、勉強熱心で、人の話に注意深く聞きいり、その質問に丁寧に答える、真面目なシチリアーノ。

 奥さまのバルバラさんは、彼と出会うまではシャネルのミラノ支店で働く キャリアウーマン だったとか。そんな二人が出会ったのは、空港だった。
 ワインを12本も持ち込もうとしたマルコは、手続きの途中で止められてしまった。
 受付人に、「一人でそんなにたくさん持ち込めないわよ。なんだったら、後ろの人に半分持ってもらったら?」
 なんて冗談を言われて、その 「後ろの人」 が、バルバラさんだったそうな。

バルバラ: 「でも手を貸したのは、彼に興味があったわけじゃなくて、彼のワインに興味があったの(笑)」

 そんな微笑ましいエピソードも、楽しい食事に華を添えた。

バルバラ: 「日本はおもてなしの国、と聞いていたけれど、それはシチリアも同じ。でも日本はそこに、 <プロフェッショナル> が共存しているのよ。そこが凄いところね。
距離はあるけれど、日本はすごく近い感じがするわ。」

 そう話すふたりの間で、同席した3歳の息子、トンマーゾくんは、やんちゃの限りを尽くすのであった。
 3人の次回の来阪が、楽しみで仕方ありませんな。

 夕食を彩ったお料理たち ↓
d0212522_19495810.jpg

d0212522_19501465.jpg

d0212522_19502752.jpg


 楽しい食事でした。
 Grazie ! Marco e Barbara !

d0212522_19493996.jpg




~ 業務用イタリアワインなら、エノテカビアンキ だす~。 ~
[PR]
by enotecabianchi | 2015-12-01 19:52 | セミナーレポート! | Comments(0)

 ヴィヴェラのレポート、コピペ~。
 

 11月11日、ポッキーの日、愛称 「ロリ」 こと、ロレダーナ・ヴィヴェラ が来日、夕食を共にしました。

「女子ってよく喋るでしょ? そしてシチリア人はよく喋る人種なの。私がよく喋るのはそんな理由だから、許してね♡ 」

 こんな調子で始まった食事は、終始賑やかで和やかな雰囲気。
 モンテ物産が扱うメーカーの中では、最も小さい、家族経営の造り手ではなかろうか。
 まだ新しい造り手で、創業間もない頃から日本への輸出が始まっている。最初のコンテナを出荷する時、コンテナの前で、家族で記念写真を撮り、「今から出荷するね。」 とモンテ物産へ送ったという、微笑ましいエピソードも。


 ヴィヴェラは、エトナ山北東部の標高550m~600m に位置する リングアグロッサ にある。
 パレルモにも畑はあるが、エノテカ・ビアンキ では、エトナのみを扱うことになった。

~ マルティネッラの畑について ~
 ヴィヴェラのエトナは全て、このマルティネッラからのブドウで造られる。マルティネッラは、海からも火山からも9kmの距離。それぞれの長所が表現されやすい利点がある。
 また、元々が海だった土地なので、溶岩由来のミネラルに加え、海からのミネラルをも感じさせる。森にも近く、繊細な香りと心地良い酸は、その涼しい気候に由来する。


~ エトナ・ビアンコ “サリズィーレ”2011 ~
 「カッリカンテ というブドウをストレートに感じられるように、余計なものは入れないし余計な香りも要らない。」
 そんな理由から、ブドウはカッリカンテ100%、ステンレスのみの熟成を経る。
 味わいは、樽熟成を経ているかのような複雑みとミネラル、アフターに爽やかさが残る上質なワイン。
 研究の結果、カッリカンテ はボトル熟成を長く経た方が、味わいに深みが増すことが解り、以後、ボトル熟成を長くしている。だから現行ヴィンテージがこの2011年。複雑みは、そこに起因している。


~ エトナ・ロザート “マルティネッラ” 2014 ~
 これがファーストヴィンテージ。3,300本の生産。
 ネレッロ・マスカレーゼ100%。
 ネレッロ・マスカレーゼ が持つ、 「しっかりとした酸味、色はピノネロだが、ネッビオーロのようなタンニン、そしてミネラル感」、これらを忠実に表現したロゼ。
 濃くならないように細心の注意を払い、プレスは全体の60%に留める。だからこその、美しい色あい。畑名を冠しているだけに、丁寧に醸された特別なロゼ。
 モンテロッサ (フランチャコルタの造り手) の社長に、「価格設定が間違っている!」 と言わしめたワイン。

~ エトナ・ロッソ “マルティネッラ” 2010 ~
 ネレッロ・マスカレーゼ80%、ネレッロ・カップッチョ20%%。バリックでの熟成を経る。
 エトナの伝統的ブレンド。
 舌ざわりが滑らかで、重すぎないが余韻が長く、エレガント。
 ビアンコと同じく、ボトルエイジングを長くしリリースを遅らせる。
「ある造り手が、 『伝統的比率だし法律でも決まっているから変えられないけれど、個人的にはカップッチョの比率をもっと上げたい』 と言っていたけれど、ロリもそう思う?」
 という僕の質問に、
「私はそうは思わないけれど、そう言っているのは、ベナンティ? 」

 エトナでは皆、手の内が知られているようだ。
 それだけ、交流が盛んだということね。

 楽しい食事でした。

 ディナーでは、こんなお料理たちが食卓を彩りました。

d0212522_1927472.jpg

d0212522_192807.jpg

d0212522_19281363.jpg

d0212522_19284113.jpg

d0212522_19285553.jpg

d0212522_19291040.jpg


 ほいで、この人たちが、「ヴィヴェラ 親善大使たち♡ 」 ↓
d0212522_1930513.jpg





~ 業務用イタリアワインなら、エノテカビアンキ でっせ~ 。~
[PR]
by enotecabianchi | 2015-11-30 19:33 | セミナーレポート! | Comments(0)
d0212522_1972379.jpg


 画像は、彼らが造るワインと トスカーナのパン。
 マリアージュなんてものではなく、互いが必要としているもの。

 素朴だが、いや だからこそ、奥が深い。


 レポートその2。
 いきます。



<キアンティ・クラッシコ>

 伝統的なキアンティ・クラッシコを造りたい。その思いは創業当初から変わらない。
 ワインを造り始めてしばらく経った1996年、黒ブドウのみのキアンティ・クラッシコの醸造が可能となり、それと同時にカベルネやシラーなどの国際品種も20%まで、ブレンドしてもよいと認められた。これは、リスクを嫌う大企業の考えから生まれたもので、だからこそレ・チンチョレは、サンジョヴェーゼ100%にこだわった。

ルカ
「20%、他のブドウを入れることは簡単だよ。キアンティ・クラッシコを濃く造ることもね。でも僕は、100%にすることでサンジョヴェーゼのエレガンスを見つけた。サンジョヴェーゼはネッビオーロと同じくらいデリケートで難しいブドウだ。僕にとってはキアンティ・クラッシコが最も重要なワイン。だから妥協はしたくない。」


<リゼルヴァとグラン・セレツィオーネ>

ルカ
「リゼルヴァに関しても、腑に落ちないことがあってね。周りには、スタンダードなキアンティ・クラッシコを、ただ熟成期間を長くしただけでリゼルヴァを名乗ったり、中には余ったものを使って劣悪なリゼルヴァを造っているものもあった。
 ウチのリゼルヴァ、ペトレスコはそうではない。 だから、リゼルヴァを表記しないことにした。」

 ペトレスコは2008年を最後に、リゼルヴァ表記がなくなり、トスカーナIGTとなります。

 グラン・セレツィオーネは、2010年ヴィンテージから始まった呼称。600の生産者たちの間で協議がなされ、多数決により各種規定事項が決定した。
 ただ、この多数決は、「一生産者一票」ではなく、造り手の所有する畑の大きさによって票数が変わる。
 つまりここでも、大企業にとって有利な条件が揃うこととなる。

 そして条件のひとつに、「100%自社ブドウのものを使用」とある。
 一見すると、まともな項目だがルカは、これを鵜呑みにしてはいけない、という。

 「逆に言えば、今まではリゼルヴァですら自社畑で造っていない生産者がいた、ということで、それはつまり、ほとんど買いブドウで造っていた生産者でも、グラン・セレツィオーネが造れる、ということ。
 ペトレスコは、グラン・セレツィオーネの規定をクリアしているが、それらと同じにはされたくないから、名乗らない。
 飲んでもらったから解るだろうけど2008年も2009年も素晴らしい。でも、2010年のペトレスコはパーフェクト! だから、期待してね!」

 そう、目を輝かせていた二人が印象的でした。



<こぼれ話>

 さて最後に、このレポートには書けなかったけれど、面白いコメントやエピソードを。


・二人が知り合って36年。レ・チンチョレは創業からもうすぐ25周年。

 ヴァレリア 「でも、一緒に仕事するって大変よ! 私、すごく我慢したもん!」


 必ずしも、順風満帆では、なかったんだね。。。


・元々モノ作りが好きなルカ。ワイン造りはもちろん、何に対しても どこからくるのかわからない自信を持っていて、

ルカ 「スシも簡単に握れると思うよ。その気になればね(笑)」


・・・。


・ヴァレリアは、彼らが造るロゼ 「ロザート・トスカーナ」を、「ヴォンゴレ」や「ズッパ・ディ・ペッシェ」、「カッチュッコ」 など、魚介類と合わせるのが好きだとか。

 新しいワインリストに掲載されていますので、是非試してみて下さいね。



 以上、ルカ&ヴァレリアとの営業レポートでした。


 最後に、終日の同行営業に遅くまでお付き合い頂き、また、醸造などの専門的な説明も的確に通訳され、更に、楽しい話になるとウィットに富んだ通訳をして頂いた サノヨーコさん。ありがとうございました。


d0212522_19154215.jpg


 50も半ばになろうかというご夫妻。
 今もまだ恋人同士のように仲良し。

 いつまでもお元気で。
 そしてお二人のように素朴で奥深い、素晴らしいワインを造り続けてくださいね。



~ 業務用イタリアワインなら、エノテカビアンキ 次もお楽しみに! ~
[PR]
by enotecabianchi | 2015-08-07 19:23 | セミナーレポート! | Comments(0)