~ さくら色こそプレミアム ~

「ワインを色で分類する時代は、終わったよ」
そう言われてからずいぶん経つが、その状況にあっても過小評価されているワインがある。
ロザートだ。
とりわけ日本は、世界的にみて遅れていると評されている。
美味しいロザートを見つけ、お店にすすめても、「ロゼはいらない」、「入れても売れない」と返ってくるばかり。
何故、ロザートは敬遠されるのだろうか?いまだに。
いくつか理由はあるだろうが、これには日本特有の背景があるのだと思う。
高度経済成長に伴い、高級品ながらもワインが日本でも飲まれるようになった頃、目にも鮮やかなワインがポルトガルからやってきた。
<マテウスロゼ>だ。
世界的ロゼブームの火付け役となったこのワインは、サントリーのオサレなCMも手伝って日本でも大ブームとなった。
飲んだことはなくても名前は聞いたことあるって人、多いと思う。
しかしながら、<去る>のもブームの特徴なので、マテウスロゼはあるイメージを残したまま時が流れた。
幾度のワインブームが訪れては去っていく中、日本ではワインの有資格者が増え市井の人ですらワインの知識が高まり、他国のそれを上回った。
これが、日本でロザート(ロゼ)が定着しにくい大きな原因ではないかと思っている。
知識がある(と思っている)から、マテウスロゼが当時大ブームとなった理由、「キレイで軽やかで甘い」ことが自称ワイン通たちには「チャラくて軽くて甘い」のがロゼと結論づけられ、そのイメージは驚くべきことに、ほぼ更新されていない。
少し前、ロザートにスポットを当てたセミナーに参加して大いに楽しんだ。
ゲストは、マッティーア・ヴェッツォーラ。
最上のロザートを造り続けているひとだ。
ガンベロロッソは彼のロザートに出合って、<ロザート最優秀賞>というカテゴリーを創ったほどだ。
それだけではない。
<イタリア最優秀生産者>にも5度選ばれているホンモノだ。
そんな人が造ったロザートが、「チャラくて軽くて甘い」?
そんなわけないよね。
ロザートにもそういう時代は確かにあった。
しかし昨年末、城崎のカニと彼のロザート、モルメンティとの出合いは僕たちオジサンに幸福をもたらした。
過去のイメージなど、もうそこにはなかったのですよ。
5月のワインリストにも、<プレミアム・ロザート>は増える予定だ。
既に世界のリゾート地、ニースやカンヌ、ガルダ湖畔、カプリ島、
日本でも沖縄や伊勢志摩、瀬戸内でもそのブームが来ていると聞く。
目まぐるしく情報が更新されるなか、ロザートのイメージだけがそのままだと、
置いてけぼり喰らいまっせ。
ロザートを味方につければ、お店はもっと深くなる。
そう思うのです。