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毎週月曜日更新♬ エノテカビアンキのブログ。

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イタリアワイン

哲人バローロ、ブレッツァ。その2.


感極まってやたら長くなったので、お時間ある時に是非w

さて、バローロ・クラッシコが複数の優れた畑のブドウをブレンドして造る、<これぞバローロ!>という表現に対し、
畑名を名乗るいわゆる<クリュ・バローロ>は、卓越した土地の表現となる。

バローロ・クラッシコは土地の個性やテロワールなどといった概念がまだない70年代、
とにかく、<おいしいワインを安定して造ること>に主眼が置かれた時代の産物だ。
そこから時代が進み80年代。卓越した畑の個性が見出され、<クリュ>が生まれた。
畑名を冠したバローロはだから、美味しいのはもちろんだがそれ以上に、
<土地とヴィンテージの個性>が最大限に表現されたワイン、ということになる。

つまり、バローロ・クラッシコとは哲学が異なるのだ。

僕がブレッツァを<哲人バローロ>と題したのは、ワイン造りのあらゆるところに哲学を見出すことができたからで、
それはとりわけ、同席されていたエンツォ(現当主)の父、オレステさんの口から多く聞くことができた。

・市場を追ってはいけない。変わらないこと。そして自分たちを好きでいてくれる人を大切にすること。
・味わいが一定するという概念は、ブレッツァにはない。
・畑ごとの違い、そしてヴィンテージの違いを楽しむこと。
・ネッビオーロを尊重すること。
・ヴィンテージに「悪い」はない。造り手はそれを素直に表現し愛でることが大切。
・そしてバローロを表現することができないと判断した年は、造らない。

そしてさらに、ブレッツァ一家はこう言った。
「ワインはこどもと同じだ。
 親は同じでも個性は違う。
 それを尊重すべきだ。
 生まれくるこどもに対して、先に産んだ子と全く同じ個性を求めたりしないだろう。
 それと同じなんだ」

そう考えるブレッツァにとって、畑の個性そしてヴィンテージの個性を包み隠さず、
長所を表現することが至上の歓びなのですよ。

ブレッツァが造るクリュ名入りのバローロは3銘柄。
カステッレーロ、カンヌビそして、サルマッサだ。
ではそのクリュの個性とは、どういうものか。
簡単に記してみる。

<カステッレーロ>
 風の吹く、丘の上の畑。3つの中で最も標高が高い。
 そのためブドウの成熟がゆっくりで、収穫が最も遅い。
 フレッシュでフローラル、シャープな味わいのバローロとなる。

<カンヌビ>
 砂の多い畑。つまり雨の多い年でも良年となりやすい。
 冬は暖かく、風が吹いていて朝日を享受する畑。
 高貴でシャープ、冷たい印象。
 フレッシュなチェリーのニュアンス。

<サルマッサ>
 3つの中では最も標高が低い。
 粘土が多い、つまり水分を保持する畑。
 盆地の底に位置し、全体的に暖かい。
 結果、酸が穏やかでタンニンが太く、果実の持つ<甘み>の存在感が増す。
 チェリーのニュアンスはここにもあるが、サルマッサのそれはフレッシュではなくリキュール漬けのニュアンス。

といったところ。
試飲したのは全て2015年のヴィンテージで、それだけに、個性の違いが如実に表れた。
とりわけカンヌビとサルマッサはたった600メートルしか離れていないのに、
味わいはまるで異なっていた。その違いには驚くばかりだ。

2015年は暑い年だったというが、ネガティヴなニュアンスは全く感じず全てのバローロが偉大だった。
素晴らしい通訳をして頂いた宮嶋さんは、
「2015年は<もったいぶらない>ヴィンテージ」と言った。
僕はこの表現がたまらなく好きだ。

ところで現在日本に、<カステッレーロ>は輸入されていない。
担当さんに聞くと、
「カステッレーロの持つ<エレガンス>を、的確にお客さんに伝えられるか、
 輸入し始めた当時は正直、自信がなかった。」
と言った。
これ、僕も同じ意見だ。
だが、経験した今ならば違う。
個人的には、この3つの中ならカステッレーロが一番好きだ。

このセミナーに同席させて頂くにあたり、バックヴィンテージを飲み比べることができたら最高に面白いと思って、
昔のインポーターである僕の古巣、エトリヴァンに問い合わせたところ、なんと、
カステッレーロの1993年を分けて頂けることになった。

会の一週間前にそれを届けて当日、ラインナップを見ると、輸入されていないはずのカステッレーロ2013年が並んでいた。
担当さんは、1993年のカステッレーロがあることを届いた直後にエンツォに話したそうで、
それなら、そのヴィンテージに似た個性を持つ2013年を贈るから比べて飲んでみなよ、と航空便で送って下さったのだとか。

まさかのダブルサプライズで実現した、最高に嬉しい比較テイスティング。
正直なところ、職業的な喜びを辛うじて感じる、くらいの期待しかもっていなかった1993年のカステッレーロは、
まだ充分に素晴らしく、同席したメンバー全員を唸らせた。

哲人バローロ、ブレッツァ。その2._d0212522_16543111.jpg

会の終盤。
哲人オレステさんがボソボソっと語ったことを宮嶋さんが聞いて、大笑いした後に訳した。

「イサオばっかり喋ってるやないか!
 エンツォ、お前ももっとがんばれよ!」

宮嶋さんのトークをご存知の方なら最高に面白いコメント!(笑)
これも哲人の持つ個性かと思うと、ブレッツァのバローロを飲むごとにクスって笑ってしまいそうやね(笑)

最高に楽しいセミナーを、ありがとう。
そして、最高に長い文章を最後まで読んで頂いたみなさまも(笑)、ありがとね♬


by enotecabianchi | 2021-04-05 16:54 | セミナーレポート! | Comments(0)