大切な友へ。
今日は僕の大事な人の月命日。
6月2日。
ワインウェイヴの西川師幸さんが亡くなられた。
氏は僕の大切な飲み友達でありビジネスパートナーでもあった。
また時代をさかのぼれば、インポーターの営業マンとして強力なライバルであったし、
更には僕が社会人になって初めての上司であり、いろんな事を学ばせて頂いた人生の先輩でもあった。
突然の訃報に戸惑ってばかりはいられないから、ひと月経ったこの日に、氏が愛したワインでもって献杯し、そこから一歩踏みだそうと思う。
ワインを用意する前に音楽をセレクトするとしよう。
今日のBGMは、プリンス。
氏は音楽を愛していた。ジャンルは多岐にわたるが、その中でもプリンスが好きでね。
「西川さん、プリンスの中で一番好きなアルバムはなんですか?」
って聞いたらすかさず、
「The Gold Experience!」
と返ってきて理由を聞くと、
「プリンス史上、最もパワーがみなぎったアルバムだから」
いかにも西川さんらしい、まっすぐな答えね。
さて、音楽も決まったところで、今日のワインはこれだ。

カナイウオーロ・ロザート2017(モンテニドリ)
ワインウェイヴさんが輸入する自慢の造り手、モンテニドリ。
氏はモンテニドリの当主、エリザベッタさんを心から尊敬していた。
僕よりも、氏よりもずっと年上で、人に対して、そしてワインに対して<誠を尽くす>ひと。
訪問したカンティーナでの彼女の振る舞いや、来日した際の彼女の毅然とした態度に強く心を打たれ、その時のエピソードを僕に聞かせてくれた時、氏はほとんど号泣に近いくらいにいっぱい涙を流しながら話された。
「そんな彼女を見ていたら、もう自分が恥ずかしくてね...。」
そう氏は僕に言ったけれど、とんでもない。
あなたも彼女に負けないくらい、人にもワインにも誠を貫いたし、それは僕だけでなくあなたを知る全ての人がそう想っているでしょう。
あなたに教わったこと、数えたらきりがないけれど、あなたが扱ったワインを飲むたびに、いろんなエピソードが脳裏をよぎる。
とりわけ僕は、立場の異なるいろんな角度からあなたを見てきたし接してきたから。
あ、そういえばこんなことも、あったなぁ。
あれは僕が社会人になって数カ月しか経っていなかったころ。
あなたはペーペーの僕を夜の街に連れだして、オトナとは何たるかを話して下さいましたね。
お店を出て3軒目(4軒目だったか)へ向かう途中、ちょっとした人混みを抜けたとき、あなたはまるで小学生のように目を輝かせて、
「今あの人に、すれ違いざまにチ〇コ触られたわぁ!」
と、半ば大喜び、半ば照れ笑い、そして幾分の自慢を含んだなんとも言えぬ笑みを浮かべてそうおっしゃいましたね。
僕はその姿を見て、
「こんなオトナがいるんだ!」
と無意味に励まされたのを昨日のことのように思い出します。
あなたが人生の先輩でよかった。
西川師幸さんに献杯。
またいつか、一緒に飲みましょう。