お客もまた、お店の一部なのです。
手前に写っているグラスね。
そう、ザルトです。オーストリアのグラス。
ウチでは扱っていないけれど最近、使っているお店が増えてきた。
小売価格8千円と高めのグラスが何故?
なんて思ったりするが、一度でもお店で使ったことのある人なら、その理由のいくつかは解るはずだ。
まず何といっても、軽い!
そしてその帰結だが、薄い!
唇に触れるときのこの繊細なシェイプは、上質なワインを味わうには不可欠ではなかろうか。
そして、オンリーワンともいえるデザインの秀逸。
いろんな理由があるだろうが僕が思うに、これらが主な理由であろうか。
何故、扱ってもいないグラスをこうもアツく語るのかって?
先日、あるお店のオーナーシェフとこんな会話をした。
丸谷:(テーブルに置いてあるグラスを見て)
「お、ザルトですね!やっぱりカッコいいですよねぇ。」
店主:「そうなんです。味わいも変わりますしね。でもウチがザルトを扱う理由はもうひとつあるんです。」
丸谷:「ほう。それは何ですかいな??」
店主:「このグラスを持ってワインを飲んでいるお客さん、とりわけ女性のお客さんの手が、最高に美しいんです。
絵になるんです。見ていて気持ちがいい。
実はこれが、ザルトを扱う一番の理由かもしれません。」
連日満席のお店のオーナーは、こういうところまで考えてモノをセレクトしているのですね。
言うまでもなくそのお店では、上質のワインがよく出る。
<レストランにとって最も不確定な要素は、客である。>
とは昔から言われることだが、
お客さん自身が絵になって上質に浸っているなら、お店が予測不能な言動など起こらないのではないか。
コスパで満足度を高めようとしたって高が知れている。
そのお客の満足度を更に高めるには、「更なるコスパ」しかないんだから。
ひとたび「高い」と感じたらそのお客は来なくなるよ。
いよいよ年末。
せっかくだから、上質を味わってもらいましょうよ。
美しい酒器と美味しいワインでもってね。