ホフスタッター。
5月31日。
ホフスタッターの4代目当主、マーティン・フォラドーリ・ホフスタッターと一日ご一緒した。
とりわけ、ブドウ品種についての説明が面白かったので、そのあたりを中心にレポートしてみる。
アルト・アディジェは山のワインだが、地中海性気候だけに海の影響も受ける。
これは、後日一緒に食事した別の造り手も、同じことを話していた。
その特殊な場所で、少ない品種を栽培して多くの種類のワインを造る。
ホフスタッターにとって最も重要なブドウは、白は<ゲヴュルツトラミネール>、赤が<ピノネロ>だ。
ゲヴュルツトラミネールはドイツ品種と思われがちだが、<トラミネール>の名が示す通り、
ホフスタッターの村、トラミンが原産。重要であるのは当然で、最高品質を誇るのも、当然なのだ。
甘いと思われることが多いが、あくまで辛口。
酸が少ない品種だから甘く感じるが、標高が高いために酸が出やすい。
ホフスタッターではタイプの異なる2種類を造る。
ピノネロに関しては言うまでもないほど、アルト・アディジェの中でもホフスタッターは最高のものを造る。
とりわけ<バーテナウ>を名乗るピノネロは、世界の同品種に比肩しうる、イタリアを代表するピノネロ。
<バーテナウ>とは、アルト・アディジェにピノネロを持ち込んだ最初の人物の名で、160年も昔にこの地に植えられた。
アルト・アディジェのピノネロのルーツ、ともいうべき場所。
ホフスタッターではピノネロから3種のワインを造る。
複数のエリアの若い樹から収穫され、ステンレス熟成を経たエントリーライン、<メクザン>。
バーテナウの畑があるエリアの名前、<マゾン>はリゼルヴァ・タイプ。
ホフスタッターはマゾン・エリアの畑の3分の1を所有する。標高は350~500メートル。
大樽とバリックでゆっくりと熟成される。
<バーテナウ>はマゾンの中で最良のクリュ。そしてイタリア最良のピノネロのひとつ。
これらの次に重要な品種は? と聞くと、白は<ピノビアンコ>、赤は<ラグライン>と返ってきた。
ピノビアンコは伝統的な品種ではないが、昔から造っている品種。
だが一時期、インパクトのあるキャラクターのシャルドネ、ミネラルが際立つピノグリージョ、
この2品種に押されてしまい、それらの品種よりも下に見られていたことがあった。
このふたつと比べるとピノビアンコのキャラクターは、「おしとやか」。
そう、まるでオードリー・ヘプバーンみたいな、ね(マーティン談)。
<バーテナウ・サンミケーレ>という名だけあって、これもマゾン・エリアの中にある畑。
3000リットルの大樽で15か月。
スケールの大きいワインで、ブルゴーニュグラスとの相性は秀逸。
ディナーでは、
に合わせて頂いたが、その相性はもう悶絶級♫
ちなみに、あの美しすぎる奥方、ベアトリクスさま一番のお気に入りが、このピノビアンコ。
ラグライン。
好きだが、よく戦うブドウ(マーティン談)。
性格は<山>そのもの。つまり、「激しく、変化しやすい。」
栽培・醸造によほど気を配らないと、アグレッシヴなタンニンが出てしまい、
発酵が長くなりすぎると、そこから青っぽさが出てしまう。
あまりあれこれと触らない方が無難な品種。だから樽熟成も経ず、セメントタンクのみ。
実験的に、屋根裏部屋で短期間乾燥させたラグラインを全体の5%だけ、ブレンドしている。
これは、甘みを出すためではなく、尖ったタンニンを柔らげるための方策だが、良い結果が出ているとのこと。
ディナーの最中、マーティンと色んなことを話した。
まずは、ヴィンテージのこと。メディアがネガティヴに報道しすぎる。
「2002年が不良年だって!? とんでもない! アルト・アディジェとシチリアは最高の年だったよ!」
グラス会社のリーデルとはプライベートで仲が良く、ホフスタッターと共同開発したグラスがある。
<オレゴン・ピノノワール> というもの。
いつかバーテナウを、このグラスで飲んでみたいものやね。
そのほか、20年前に大阪で食べた世界一高いハンバーガーのことや、
以前取引していたインポーターの価格設定に大いなる疑問を抱いたこと。
ここでは書けないことも、チラホラ。
「アルト・アディジェは優良な協同組合がたくさんある。
協同組合はオーケストラのようなもの。
小さな造り手を指揮者が取りまとめて、素晴らしい作品を奏でる。
ホフスタッターは違う。
テロワールが第一。最上のワインは、ブレンドして補うのではなく、
その土地 そのヴィンテージの個性をさらけ出すこと。
それが大事なんだよ。」

一緒に巡って、最高に楽しい一日でした!
また大阪に帰ってきなさいよ ♫
~ 業務用イタリアワインなら! エノテカビアンキッ!!マーティンにも、「ナポレターノみたいな運転だな(笑)」って言われたけどね ♫ ~