マローロ。
イタリアワインの多様性は今さら言うまでもないが、
グラッパもまた、ひと言では言い表せないほど、様々な個性が光る。
ロレンツォ・マローロによる 90分みっちりセミナーで、グラッパの幅広さそして、奥深さを知った。
かいつまんで、レポートしてみる。
そやけど、めっちゃ長いので悪しからず。
ピエモンテのグラッパメーカーとしては新しく、創業は1977年。
ロレンツォの父パオロが始めた。もともと父は醸造学校の先生で、グラッパ造りは趣味が高じて始めたもの。
趣味だから当然、コストよりも品質を重視する。
マローロのコンセプトは、まさにここから始まった。
戦前、イタリアには1300軒ものグラッパメーカーが存在したそうだ。
時代が移り現在は、30軒ほどに減った。
戦後の、パンすら買えない極貧が長く続いてはグラッパどころではない。
そして、ワインもグラッパも、安ければ何でもよかった。
そんな中、父はグラッパメーカーを志した。
当時、レストランを経営していた祖父母からすれば、息子は気が狂った! と思うのも当然、そんな時代背景だったのだ。
安いグラッパが横行している中、フリウリで単一ブドウのグラッパを醸す造り手が現れた。
ノニーノだ。
ノニーノは単一ブドウのグラッパを造った最初のメーカーで、同じ頃、
「マローロという造り手が上質な単一ブドウのグラッパを、アルバで造り始めた。」
と、評論家のルイジ・ヴェロネッリが紹介している。
ロレンツォの父パオロは、
グラッパは、コニャックやウィスキーとはタイプが異なる。
ポイントとなる <香り> を注意深く抽出することが求められる点で共通する、<オードヴィ> に学ぼうと考えた。
そこで導入したのが、そのオードヴィを造るマシン、<ベンマリー>だ。
通常、グラッパは1時間で150リットル以上の抽出が可能なのに対し、
ベンマリーでは1時間でたったの10リットル!
いかに時間をかけてゆっくり抽出しているかが解る対比だが、
その時代にこのような選択をするのはバカげていると言われるのが常だったそうな。
マローロが最も注視しているのは <香り> だが、ブドウの豊潤な香りを100%引き出すのは困難を極める。
ベンマリーの、極度に緩やかな抽出が、それを可能にする。
そしてロレンツォは言う。
「透明のグラッパを飲めば、それがどのように蒸留されたかがよく解るよ。
色のついたグラッパは、いわばドレスアップ。
対して透明は、‟真っ裸” みたいなものだからね。」
彼はまた、グラッパをエスプレッソに喩えた。
「上質なエスプレッソを作るのに必要なものは何だい?
原料、マシン、そして人だよ。 グラッパも同じさ。
グラッパにおいて原料は第一に、フレッシュかつ上質であること。
上質なワインを造る人からヴィナッチャを仕入れる。
ワインの収穫に合わせて醸すから、9月に始まって11月には醸し終わっている。
必然的にマローロのグラッパは全て、単一ブドウそして、単一ヴィンテージとなる。
上質な原料を、上質なマシンでもって、趣味から始めた品質第一の人が醸す、ってことだね。」
~ テイスティング ~
グラッパ・ディ・モスカート
アロマティック・グラッパの代表格。
洋ナシ、ニワトコ、セージのニュアンス。
フレッシュで甘く、上品な香味。
そしてロレンツォは、
「フルーツサラダにアクセントとして少し加えたら面白いよ。」
とグラッパの新しい使い方をも提案してくれた。
グラッパ・ディ・ネッビオーロ
ノン・アロマティック・グラッパ。
250リットルの樽で短期間の熟成。これは、ネッビオーロの強い酒質に柔らかさを与えるためのもの。
カフェ・コレットに最適! とロレンツォ。
グラッパ・ディ・モスカート ‟アプレス”
ピエモンテとシチリアの融合。
シチリアの優良な造り手、ドンナフガータとは昔からの友人で、彼らのパッシート・ディ・パンテッレーリアを熟成させた樽を使って、5年熟成。
ナッツ、ヴァニラのニュアンス。
思わず目を閉じて香りに酔ってしまいたくなるほど、甘く危険な香り。
「フォワグラ、そしてボクたちが作るパネットーネとの相性は最高さ!」
ラベルは一見、ブルーベリーのような果実がモチーフになっているのかなと思いきや、
モスカートが乾燥によって小さく甘く凝縮し、フレッシュなモスカートよりも蜂がたくさん集まっている様を描いている。
グラッパ・ディ・バローロ ‟12年”
80%をマルサーラの樽、20%をピエモンテの白ワインに使った樽。
その白ワインの樽とはなんと!
マルヴィラのレネージオの熟成に使われたトンノーと、アルド・コンテルノのブッシアドールに使われたバリックを使用。
グラッパ・ディ・バローロ ‶20年”
マルサーラの樽で12年。アカシアの新樽で8年熟成。
「エイジド・グラッパは ‶エンターテイメント”。
よく、そういった飲みものを<メディテーション(瞑想用)スピリッツ> なんて呼んでるけど、
瞑想でボクのグラッパの味わいをすっかり忘れたりしないでくれよ!(笑)」
アルコール度数は50%とかなり高いが、とてもそうは感じないソフトでエレガントな味わい。
「父はいつも言っていたよ。
<人は歳をとったら必ずしも賢くなるとは限らない。>ってね。
グラッパも同じだよ。
<20年> は <12年> の上、ではない。
好みもあるし、何よりシチュエーションが大事だ。
その場その時に最適な年数をセレクトしてほしい。」
グラッパ・ディ・バローロは全部で4種類。
9年、12年、15年、20年。
ラベルは全て、バラの木にカワセミがとまっている構図だ。
同じように見えるラベルだが、それらは全て異なる。
それぞれの味わいをバラの状態、<蕾、花、果実> によって巧みに表現している。
こういった細かいディテールにこだわるあたり、
イタリアの職人が持つセンスが光る。
グラッパ・ディ・バローロ ‶ブッシア2004”
2001年がファーストヴィンテージでこれが2ヴィンテージ目(2002年、2003年は造っていない)。
熟成はアカシアの古樽のみ。
15年と20年に使われた樽を使用する。
バローロ・ブッシア、とりわけ アルド・コンテルノやオッデーロなど優良な造り手のヴィナッチャ。
2004年は3,320本のリリース。
エンターテイメントの極み。
ヴァニラ、チョコレート、ココア、
シナモン、黒コショウ、リコリス、
タール、スモーキー etc.
これらはロレンツォが口にした、グラッパ・ディ・バローロの表現だ。
ブッシアはそこに、
バルサミコ、アニス、ミント、
そして、ブッシア。
バローロ・ブッシアを飲んだことのある人ならば、その味わいをこのグラッパから、採ることができる。
ロレンツォ
「完璧な味を求めてはいない。
はっきり、コレ! という味わいはないが、いろんなものを想起させる液体。
それがマローロのグラッパさ。」
モスカートやネッビオーロは、人がイメージしやすいグラッパ。 「上質の」ね。
グラッパ・ディ・バローロは、そこに留まらない。
世界の銘酒を飲み慣れている人ですら驚かせる存在感が、このグラッパにはある。
そして、グラッパの明るく拓けた未来をも、見たような気がした。
~ 業務用イタリアワインなら! エノテカビアンキッ!!グラッパは、さらなる深みへ。~
グラッパもまた、ひと言では言い表せないほど、様々な個性が光る。
ロレンツォ・マローロによる 90分みっちりセミナーで、グラッパの幅広さそして、奥深さを知った。
かいつまんで、レポートしてみる。
そやけど、めっちゃ長いので悪しからず。
ピエモンテのグラッパメーカーとしては新しく、創業は1977年。
ロレンツォの父パオロが始めた。もともと父は醸造学校の先生で、グラッパ造りは趣味が高じて始めたもの。
趣味だから当然、コストよりも品質を重視する。
マローロのコンセプトは、まさにここから始まった。
戦前、イタリアには1300軒ものグラッパメーカーが存在したそうだ。
時代が移り現在は、30軒ほどに減った。
戦後の、パンすら買えない極貧が長く続いてはグラッパどころではない。
そして、ワインもグラッパも、安ければ何でもよかった。
そんな中、父はグラッパメーカーを志した。
当時、レストランを経営していた祖父母からすれば、息子は気が狂った! と思うのも当然、そんな時代背景だったのだ。
安いグラッパが横行している中、フリウリで単一ブドウのグラッパを醸す造り手が現れた。
ノニーノだ。
ノニーノは単一ブドウのグラッパを造った最初のメーカーで、同じ頃、
「マローロという造り手が上質な単一ブドウのグラッパを、アルバで造り始めた。」
と、評論家のルイジ・ヴェロネッリが紹介している。
ロレンツォの父パオロは、
グラッパは、コニャックやウィスキーとはタイプが異なる。
ポイントとなる <香り> を注意深く抽出することが求められる点で共通する、<オードヴィ> に学ぼうと考えた。
そこで導入したのが、そのオードヴィを造るマシン、<ベンマリー>だ。
通常、グラッパは1時間で150リットル以上の抽出が可能なのに対し、
ベンマリーでは1時間でたったの10リットル!
いかに時間をかけてゆっくり抽出しているかが解る対比だが、
その時代にこのような選択をするのはバカげていると言われるのが常だったそうな。
マローロが最も注視しているのは <香り> だが、ブドウの豊潤な香りを100%引き出すのは困難を極める。
ベンマリーの、極度に緩やかな抽出が、それを可能にする。
そしてロレンツォは言う。
「透明のグラッパを飲めば、それがどのように蒸留されたかがよく解るよ。
色のついたグラッパは、いわばドレスアップ。
対して透明は、‟真っ裸” みたいなものだからね。」
彼はまた、グラッパをエスプレッソに喩えた。
「上質なエスプレッソを作るのに必要なものは何だい?
原料、マシン、そして人だよ。 グラッパも同じさ。
グラッパにおいて原料は第一に、フレッシュかつ上質であること。
上質なワインを造る人からヴィナッチャを仕入れる。
ワインの収穫に合わせて醸すから、9月に始まって11月には醸し終わっている。
必然的にマローロのグラッパは全て、単一ブドウそして、単一ヴィンテージとなる。
上質な原料を、上質なマシンでもって、趣味から始めた品質第一の人が醸す、ってことだね。」
~ テイスティング ~
グラッパ・ディ・モスカート
アロマティック・グラッパの代表格。
洋ナシ、ニワトコ、セージのニュアンス。
フレッシュで甘く、上品な香味。
そしてロレンツォは、
「フルーツサラダにアクセントとして少し加えたら面白いよ。」
とグラッパの新しい使い方をも提案してくれた。
グラッパ・ディ・ネッビオーロ
ノン・アロマティック・グラッパ。
250リットルの樽で短期間の熟成。これは、ネッビオーロの強い酒質に柔らかさを与えるためのもの。
カフェ・コレットに最適! とロレンツォ。
グラッパ・ディ・モスカート ‟アプレス”
ピエモンテとシチリアの融合。
シチリアの優良な造り手、ドンナフガータとは昔からの友人で、彼らのパッシート・ディ・パンテッレーリアを熟成させた樽を使って、5年熟成。
ナッツ、ヴァニラのニュアンス。
思わず目を閉じて香りに酔ってしまいたくなるほど、甘く危険な香り。
「フォワグラ、そしてボクたちが作るパネットーネとの相性は最高さ!」
ラベルは一見、ブルーベリーのような果実がモチーフになっているのかなと思いきや、
モスカートが乾燥によって小さく甘く凝縮し、フレッシュなモスカートよりも蜂がたくさん集まっている様を描いている。
グラッパ・ディ・バローロ ‟12年”
80%をマルサーラの樽、20%をピエモンテの白ワインに使った樽。
その白ワインの樽とはなんと!
マルヴィラのレネージオの熟成に使われたトンノーと、アルド・コンテルノのブッシアドールに使われたバリックを使用。
グラッパ・ディ・バローロ ‶20年”
マルサーラの樽で12年。アカシアの新樽で8年熟成。
「エイジド・グラッパは ‶エンターテイメント”。
よく、そういった飲みものを<メディテーション(瞑想用)スピリッツ> なんて呼んでるけど、
瞑想でボクのグラッパの味わいをすっかり忘れたりしないでくれよ!(笑)」
アルコール度数は50%とかなり高いが、とてもそうは感じないソフトでエレガントな味わい。
「父はいつも言っていたよ。
<人は歳をとったら必ずしも賢くなるとは限らない。>ってね。
グラッパも同じだよ。
<20年> は <12年> の上、ではない。
好みもあるし、何よりシチュエーションが大事だ。
その場その時に最適な年数をセレクトしてほしい。」
グラッパ・ディ・バローロは全部で4種類。
9年、12年、15年、20年。
ラベルは全て、バラの木にカワセミがとまっている構図だ。
同じように見えるラベルだが、それらは全て異なる。
それぞれの味わいをバラの状態、<蕾、花、果実> によって巧みに表現している。
こういった細かいディテールにこだわるあたり、
イタリアの職人が持つセンスが光る。
グラッパ・ディ・バローロ ‶ブッシア2004”
2001年がファーストヴィンテージでこれが2ヴィンテージ目(2002年、2003年は造っていない)。
熟成はアカシアの古樽のみ。
15年と20年に使われた樽を使用する。
バローロ・ブッシア、とりわけ アルド・コンテルノやオッデーロなど優良な造り手のヴィナッチャ。
2004年は3,320本のリリース。
エンターテイメントの極み。
ヴァニラ、チョコレート、ココア、
シナモン、黒コショウ、リコリス、
タール、スモーキー etc.
これらはロレンツォが口にした、グラッパ・ディ・バローロの表現だ。
ブッシアはそこに、
バルサミコ、アニス、ミント、
そして、ブッシア。
バローロ・ブッシアを飲んだことのある人ならば、その味わいをこのグラッパから、採ることができる。
ロレンツォ
「完璧な味を求めてはいない。
はっきり、コレ! という味わいはないが、いろんなものを想起させる液体。
それがマローロのグラッパさ。」
モスカートやネッビオーロは、人がイメージしやすいグラッパ。 「上質の」ね。
グラッパ・ディ・バローロは、そこに留まらない。
世界の銘酒を飲み慣れている人ですら驚かせる存在感が、このグラッパにはある。
そして、グラッパの明るく拓けた未来をも、見たような気がした。
by enotecabianchi
| 2019-05-09 22:17
| セミナーレポート!
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