ヤマウズラの眼。
アヴィニョネージ・ディナー 「番外編」。
7種類のテイスティングで、ひときわ異彩を放っていたのが、
ヴィンサント・ディ・モンテプルチアーノ “オッキオ・ディ・ペルニーチェ” 1998
こんなん出るのん!?
ご存知、ヴィンサント最強にして最高価格のワイン。
小売価格、なんと、
¥55,000
しかも、ハーフやで。
「これを開けて皆さんにサーヴすることを、誇りに思う。」
と半ば興奮気味に話したあと、ブルゴーニュグラスに少量ずつ、慎重に、微笑を隠さずサーヴして頂いた。
「これは特別なワイン。
なにせ、収穫から飲むまで、最低でも15年を要するからね。」
まず、10月に収穫されたサンジョヴェーゼは、ヴィンサントを造るための部屋 「ヴィンサンタイア」 で6か月間、陰干しされる。
その葡萄をプレスするのだが、はちみつのような濃厚さのために、プレスし終わるまでに1週間かかる。
そのモストを、50リットルの樽 「カラテッリ」で4年間、発酵させる。
そして同じカラテッリで10年間という、永い熟成。
最初からはちみつのような液体が更に濃厚になり、プレスされた60%もの水分が、その10年で蒸発する。
そうしてできたヴィンサントだが、まだリリースされない。
不純物を沈めるために、ステンレスタンクに移し替え、12か月、待つ。
ここではじめてボトルに入れて、更に12か月、静置する。
時空を越えたワイン。
造り方を聞いただけでも、そりゃその価格になるね。
そうしてできた液体は、この濃厚さ。
スワリングできないくらい、濃い。
グラスにへばりついて落ちてこないのが、わかるだろうか?
経験したことのない香りと味わい。だから、表現できない。
また、できたとしても、どんな言葉もこのワインの前には陳腐にしか聞こえないだろうから、しないことにした。
ブレット氏はこれをサーヴしている間中、
「これを食事に出すのはタブーだ!」
としきりに言っていたが、体験して、腑に落ちた。
このワインは僕たちに、この上なく強烈な印象を与えたが、その代わり、
それまでのワインの印象が薄くなった。
モンテさん。
これでよかったのだろうか?